産地特徴
綿を布でくるんで、さまざまに立体的な絵柄を仕上げげる「押絵」が羽子板に取り入れられたのは江戸時代の初めごろです。 江戸時代後期の文化文政期(1804~1829)になると歌舞伎役者の舞台姿を写した羽子板が登場、江戸の人々の人気を博しました。江戸庶民文化が創り出した工芸品である押絵羽子板は、歌舞伎の発展とともに発達し、その伝統的な技法は今日も受け継がれ、現在の押絵羽子板師たちが伝統工芸品「押絵羽子板」製品を作りだしています。
産地技法
「押絵」
(1)厚紙を土台にし、綿(わた)を布でくるむこと。
(2)押絵を組み上げる際には、和紙をあて紙にすること。
(3)押絵をくるむ際又はあて紙をする際には、熱した鏝(こて)を用いて糊(のり)で接着すること。
「面相」
(1)「目留め」及び「地塗り」を行った後、渋紙製の型紙を用いて絵の具を刷り込むこと。
(2)筆を用いて描線を描くこと。
原材料
1 主原料として使用する生地は、絹織物又は綿織物とすること
2 使用する綿(わた)は、木綿わたとすること。
3 押絵の土台となる厚紙は、和紙を貼り重ねたもの又はボール紙とすること 。
4 あて紙は、和紙とすること。
5 面相には墨、膠(にかわ)及び顔料を用いていることとし、顔料は主に胡粉(ごふん)、亜鉛華又は岩絵具を用いること。
産地歴史
江戸時代より「歳の市」が行われる浅草周辺で多く生産されてきた江戸押絵は、関東大震災や戦災による疎開などのため、現在は生産者が近県にもいます。かつては江戸三座といわれる芝居小屋が浅草にあり、歌舞伎の着物、装束、風俗などを題材に、日本画の画法も交えながら発展し現在に至っています。現在の江戸押絵は羽子板、肖像画、額装、また、屏風や団扇などの装飾にも使われています。